公開日: 2016年5月14日土曜日


本授業のねらいについて書いていきます。

 まず,どのような子どもの姿を目指しているかというと,「図形を念頭で操作し,判断できる子ども」です。簡単な例でいうと,展開図が与えられてその展開図が直方体になるかどうかが判断できる姿(またその逆)です。

 しかし,教科書の活動を見たときに,以下のような課題が見受けられました。

①「展開図を書く」「展開図の正誤判断」「重なる点や辺の確認」という3つの活動がつながっていない。

②展開図をかく活動が1種類しかない。

③展開図と立体模型を関連付けて見る活動がない。(見比べる必然性がない)

 また,大分大学准教授中川裕之先生は,「立体図形の指導では,空間観念のうち,立体図形の構成要素,性質など論理的な側面が重視されており,空間やそこにおける図形を想像し念頭で操作するといった直観を用いる側面は見落とされがちである。そかし,立体図形の性質を覚えるなどして論理的な側面をいくら鍛えても,空間を想像することや念頭操作することなどの直観的な側面がなければ,論理を先導する直観が働かず,立体図形を考察することはできない」¹と述べている。つまり,「見る」こと「操作する」ことをもっと充実させなければ,立体図形の学習として不十分であるということです。

 そこで,次の3点を盛り込む授業を考えました。

①手元の模型を切り開く活動によって展開図を作らせる

②展開図から手元の模型を再構成させる

③図形の構成要素に着目させる

 授業の流れは,前回までにご紹介した通りですが,今回の授業で特徴的なのが「蓋がパカパカする直方体」(以下「蓋つきの箱」)を前提としたことです。これは分科会でも話題になりました。最大の理由は,「念頭操作をしたときに間違った展開図が出やすく,再構成の必然性が生まれるから」です。「蓋つきの箱」にせず,普通の直方体でしてもよかったのですが,それだと淡々と展開図を作って終わりになりそうでした。「何かおかしい」と感じさせ,「明らかにしたい」という思いを持って活動させたかったのです。

 また,分科会のまとめで言っていただいた利点として,「もともと開いているから切るのが4カ所でいい」というものでした。確かにその通りですね。子どもたちの作業が3手間減ります。(普通の直方体は7か所切る必要があります)

 分科会では「普通の直方体は扱わないのですか?」という質問がありました。これは賛否あると思いますが,私は扱いませんでした。理由は簡単です。基本的には直方体と変わらないからです。逆になぜ普通の直方体を扱う必要があるのでしょうか。皆さんは直方体の展開図がいくつあるかご存知ですか?54通りです。そんなことは知らなくてもいいし,54通りすべてを描ける必要はありません。大切なのは,「念頭で操作し,判断できるかどうか」です。「直方体」というコンテンツについて詳しく知っていることよりも,「平面図形と立体を念頭で往還する」というコンピテンシーが育つことを願っているのです。

 長くなりましたが,興味のある方は,ぜひやってみてください。意欲的に展開図をかき,念頭操作をし,面と辺に着目して説明する子どもたちの姿が見られました。ご意見ご質問等もお待ちしています。

お問い合わせは kimigahoshikosokanasikere@yahoo.co.jp 熊大附属小 大林まで

引用文献

1)藤井斉亮編著,『算数数学科教育』,一藝社,2015
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